フロアの美しさを引き出すことにフォーカスし、豊富な技術革新と知識を持つフローリング業界の第一人者。
スウェーデンBona社の日本代理店 株式会社オカベです。
今回は、フローリングのお手入れ方法【応用編】。
ワックスがけについてのお話です。
最近では、ノンワックスタイプのフローリングが増えてきています。
そのため、フローリングにワックスを塗らないという方も増えてきていると思います。
一方で、「フローリングをキレイに保ちたいからワックスを塗る。」という方もまだまだいらっしゃるのではないでしょうか?
ワックスは、大きく2つに分けられます。
ひとつは、フローリングに浸透することでフローリングを保護するもの。
もうひとつは、フローリングの表面に保護膜を形成するもの。ワックスによる保護膜がフローリングを汚れや水分から保護します。
前者は蜜ろうや植物油を原料につくられているものが多く、「ワックス」ではなく「オイル」という名前で販売されている場合もあります。
こちらは無塗装やオイル塗装で仕上げられたフローリングに適しています。
無塗装・オイル塗装仕上げのフローリングのワックス塗布
木本来の質感やぬくもりを感じやすい無塗装・オイル塗装仕上げのフローリング。
一方で、汚れや水には弱いので、普段のお手入れには少し気を使う必要があります。
無塗装・オイル塗装仕上げのフローリングには、ワックス(オイル)を定期的に塗布してあげることが大切です。
ワックス(オイル)のオイル分が木の内部に浸透し、フローリングを乾燥やひび割れ、汚れの侵入から守ります。
定期的に塗ると書きましたが、塗れば塗るほどよいかというと、そうではありません。
木材に浸透できるオイルの量は限られています。浸透しきれなかったオイルは表面に残り、床のべたつきの原因となります。
また、オイルが光ってフローリングのルックスを変えてしまう場合もあります。
フローリングの表面が毛羽立ってきたり、かさついてきたと感じとき。それがワックス(オイル)を塗るおすすめのタイミングです。
また、無塗装やオイル塗装仕上げのフローリングは、床表面に保護膜がほとんどありません。
多少のシミであれば、サンディングペーパーで削って、オイルを塗り直すといった部分的に補修が可能です。
ウレタン・UV塗装仕上げのフローリングのワックス塗布
ウレタン・UV塗装仕上げのフローリングは、すでにフローリング表面に強い保護膜が形成されています。
つまり、無塗装・オイル塗装仕上げのフローリングと比べて、汚れや水分に強いフローリングと言えます。
ウレタン・UV塗装仕上げのフローリングは、保護膜が十分にその役割を果たしている間は、ワックスを塗布する必要性はとても低いです。
塗装の保護膜に傷がたくさんついていて見栄えが悪くなってきた…という方やどうしてもワックスを塗りたい!という方以外には、基本的にはワックス塗布をおすすめしていません。
もし、ワックスを塗布する場合は、そのメリット・デメリットの両方をよく理解してから、実際の作業を行うことをおすすめします。
水性樹脂系ワックスのメリット・デメリット
まずは、メリット・デメリットをそれぞれあげてみましょう。
水性樹脂系ワックスのメリット
- フローリングを傷や汚れから保護する
- フローリングに光沢を与える
- フローリングの寿命を延ばす(うまく付き合えれば)
水性樹脂系ワックスのデメリット
- 定期的に塗り直しが必要
- 時間や手間がかかる
- 定期的にはく離が必要
- はく離作業に失敗するとフローリング自体がダメになるリスクがある
ワックスがけの最大のメリットは、「フローリングを傷や汚れから保護する」ことです。
普段生活していく中で、床の傷や汚れは避けて通れません。
ワックスでフローリング表面に保護膜を作ることで、傷や汚れは保護膜につくことになります。
つまり、フローリング自体はキレイなままなのです。
また、フローリング自体についた傷は簡単には補修できません。
しかし、ワックスについた傷であれば、ワックスを塗り直すことで、比較的容易に修復が可能です。
また、ワックスは、フローリングにツヤを与えます。
元々のフローリングに近いツヤのワックスを塗布することで、ツヤが戻ります。
ツヤのあるフローリングに「ツヤ消しタイプ」のワックスを塗って、ほんの少し質感を変えるということもできます。
(ただし、ツヤありフローリングがまったくツヤがなくなるという訳ではありません。あくまでほんの少しだけ変えられるという程度です)
ここまでを見ると、「やっぱりワックスを塗ったほうがいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、「ワックスを塗ったことを後悔する」ということも実際に起こっています。床を貼り直すことになってしまった!という悲しい事例もあります。
メリットを上回る可能性もあるデメリット。それについてもう少し詳しく見ていきましょう。
ワックスを塗ることの最大のデメリット=ワックスはく離作業
ワックスを塗ることの最大のデメリット。
それは、「ワックスはく離作業」が発生することです。
ワックスがけで形成される保護膜は比較的柔らかいもの。普通に生活していても、保護膜はどんどんすり減っていってしまいます。
そのため、ワックスは半年に1度くらいを目安に定期的に塗り足していく必要があります。
定期的にワックスを塗り足していくと、よく歩く場所とあまり歩かない場所でワックスの厚みに差が生じます。その結果、床表面にムラが生じたりします。
また、ワックスとワックスの間に汚れが挟み込まれて、黒ずんで見えたり…ということが発生します。
こうなってしまうと、ワックスを一度剥がして、再度塗り直す「ワックスはく離作業」が必要になります。
「ワックスはく離作業」はワックスを塗る作業よりもはるかに大変な作業です。リスクが非常に高い作業でもあります。
「ワックスはく離作業」には「はく離剤」というアルカリ性の薬剤を使用します。
このアルカリ性の薬剤が、フローリングにとっては大敵なのです。
キレイにするためにワックスを塗ることが、リスクの高い「ワックスはく離作業」への第一歩を踏み出すことになってしまいます。
ワックスを塗るときは、この「ワックスはく離作業」のリスクまで考慮する必要があるのです。
「ワックスはく離作業」のリスクについては、下記の記事にも詳しく書いてあります。参考にしてみてください。
フローリングのワックスはく離作業 そのリスク
ワックスがけの方法
それでは、実際にワックスを塗る方法を順を追って説明します。
自然塗料系のワックスでも、水性樹脂系ワックスでも基本は同じです。
1. 家具など床に置いてあるものを移動させる
効率よくワックスをかけるために、なるべく床を広く開けてください。
物をどかしながらワックスをかけると、ムラのある仕上がりになったり、ホコリや汚れを抱き込んでしまう原因になります。
2. 掃除機やモップを使って、フローリングの上のゴミやホコリを取り除く
ワックスを塗る前に、まずフローリングをキレイに掃除しましょう。
特に、水性樹脂系ワックスを塗る場合は、床に残ったゴミやホコリが、床とワックス(またはワックスの層の間)にはさまってしまい、ワックスはく離をしないと取れなくなってしまいます。
上にも書いた通り、ワックスはく離作業はリスクの高い作業ですので、「失敗したからはく離すればいい」という風に簡単には行えません。
せっかく手間をかけてワックスを塗ったのに、ワックスの中にゴミやホコリを抱き込んでしまい、見た目がイマイチになった床で生活するということを避けるためにも、念入りに掃除をしてください。
3. フローリングをクリーナーで拭き上げ、乾燥させる
フローリングのゴミやホコリを取り除いたら、クリーナーを使用して床を拭きあげます。
一見キレイな床に見えても、床はあんがい汚れているもの。
キチンと汚れを落としてからワックスを塗らないと、ワックスを塗り重ねていくうちに、わずかな汚れが層になって、気づいたときには新築時と全然違った色合いになってしまうことがあります。
また、クリーナーによって使用後に水拭きが必ず必要なものと、必要でないものがあります。
水拭き必須のクリーナーを使用した後は、特に念入りに水拭きしましょう。
そして、水拭きした後はフローリングをよく乾燥させてください。
乾燥させないままワックスを塗布することは失敗のもと!
オイル塗布の場合は、オイルがきちんと浸透しません。
水性樹脂系ワックスの場合は、床(または下のワックスの層)とうまく密着せず、一部分だけはがれたようになってしまう可能性があります。
4. ワックス(オイル)を塗布する
いよいよワックスを塗っていきます。
ワックスを塗る際は、塗り漏れがないように、部屋を小さく区切って、フローリングの目に沿って塗っていきます。
また、部屋の奥から、入口へと塗り進めると、部屋から出られない!ということを避けられます。
塗るワックスの量は、ご使用になるワックスの説明書をご確認ください。
ワックスの量が多すぎると乾燥に時間がかかり、床がべたべたしてしまうこともあります。
反対に少なすぎると、床がきちんと保護されず、かえって見栄えが悪くなってしまう可能性もあります。
規定量を守って塗ることが大切です。
5. ワックスを乾燥させる(オイルの場合は拭き取り後、乾燥させる)
ワックスを塗った後は、よく乾燥させます。
乾燥時間はご使用になるワックスにより異なります。説明書をよく読んで、しっかり乾燥させてください。
6. 移動したものを元に戻す
最後に移動したものを戻して、作業は完了です!
まとめ
フローリングにワックスをかけることのメリット、デメリットを理解いただけたでしょうか?
ワックスをかけるときには、メリットはもちろん、デメリットをしっかりと理解することが重要です。
あなたのご自宅のフローリングが、ノンワックスタイプだったり、ウレタン樹脂でコーティングされているフローリングだったら、私たちは、簡単にはワックスがけをおすすめしません。
ここぞとばかりにワックスをかけるよりも、乾拭きやクリーナー拭きといった日々のお手入れを丁寧に行うことこそが、フローリングをキレイに保つ最大のコツなのです。