フロアの美しさを引き出すことにフォーカスし、豊富な技術革新と知識を持つフローリングメンテナンス業界の第一人者。
スウェーデンBona社の日本代理店 株式会社オカベです。
古くなったワックスを剥がす作業を「ワックスはく離」作業と呼びます。
最近ではDIYの流行も受けて、ホームセンターやネットショッピングでも手軽にフローリングのワックスを剥がすキットや薬液を手に入れることができるようになりました。
また、YouTubeでは施工方法を教える動画も数多く投稿されています。
しかし、ワックスはく離にはリスクが伴います。
そのリスクを十分に理解された上で作業に取り掛からないと、キレイに仕上がらないだけでなく、床を傷めてしまうこともあります。
大事な床を保護するつもりが、時に「張り替え」にまで至るケースに発展することも。
特にフローリングのワックスはく離作業は、プロの業者でも依頼を断る場合もあるくらいリスクが高い作業です。
今回は、なぜワックスはく離は清掃のプロでも難しいのか?
不用意にワックスを剥がした失敗例とともに、ワックスはく離作業の基礎知識をご紹介していきます。
ワックス剥がしの悲惨な結末
百聞は一件にしかず。プロの清掃業者が起こした失敗事例をご覧ください。
これらの写真は、施工途中ではありません。
ワックスはく離作業を行った結果です。
ワックスだけではなくフローリングの保護塗料もまだらに剥げてしまい、下地が見えてしまうまで床材が傷んでしまっていることがお分かりいただけると思います。
このほかにも、床板自体が剥がれてしまった! そんなケースが見られます。
高級マンションのワックスの塗り替えを行った業者がワックス剥がしに失敗。
激怒したオーナーから床の全面張り替えを言い渡されたというケースも現実に起きています。
プロの清掃業者であってもワックスはく離に失敗するケースが多いのはなぜ?
上記の写真を見て、リスクについてはご理解いただけたと思います。
では、なぜこのような事故が起きてしまうのでしょうか。
その原因の多くは施工者の知識不足にあります。
フローリング等の床材の上に塗布するワックスのほとんどは、アクリル樹脂から作られています。
床表面を保護する目的のほか、清潔感や美観の維持。床のキズを隠すためにも用いられます。
ムラなどの軽微な失敗はあれ、ワックスを塗るだけでは、床材に深刻なダメージを追ってしまうような失敗は起こりません。
問題はワックスをはがす「はく離剤」の成分にあります。
樹脂を分解するはく離剤は、強いアルカリ性でできているものが多く、強い毒性を持ちます。
素手で作業していると手の皮が剥けるぐらいのアルカリ度です。
もちろん製品によって違いがあり、中性や弱アルカリ性のはく離剤もあります。
しかし、業務用の強力なはく離剤のほとんどは、強いアルカリ性だと思って間違いはありません。
アルカリ成分は、フローリングの多くに含まれるタンニン酸と反応し、変色をもたらします。
(この症状は「アルカリ焼け」と呼ばれます)
ワックスはく離作業中に、フローリングに塗布したはく離剤がダークブラウンに変わってきたらもう手遅れ。
すぐにはく離剤を除去しても、アルカリ焼けはすでに発生しています。
アルカリ焼けが発生しても、1週間から1ヶ月ほど放置して周囲の色合いと馴染んでくる場合もあります。
しかし、何ヶ月経ってもしっかりと焼け跡が残ってしまう場合もあり、フローリングの見た目を損ねてしまいます。
先に紹介した体育館の写真は、「はく離剤によってフローリングがアルカリ焼けを起こしてダメージを受けた」例です。
また、はく離作業の時に使う水分にも注意が必要です。
はく離作業にはたくさんの水分を使用します。
この水分を木材が吸収して、変形してしまう恐れがあります。
フローリングが反ってしまったり、単板の一部がはく離して膨らんでしまったり。
最悪の場合はフローリングがパンクしてしまうケースもあります。
ワックスをはく離する際には、「タンニン酸を含む」、「水分で変形する」といった木の特性をよく理解する必要があります。
現状のフローリングのリスクがどの程度なのかを正しく判断すること。
そして、状況にあった適切な作業を行うこと。
フローリングのはく離作業では、それが重要なのです。
一方で、専門知識がなくてもかんたんにはく離できてしまう場合が存在することも事実です。
例えば、フローリングの状態と表面塗装の状態がよく、ワックスの堆積も少なく、塗布してからの年数が少ないなど、条件が揃っていた場合は、意外なほど簡単にはく離作業ができてしまうことがあります。
このフローリングの状態なら大丈夫と思って作業しても、不運にもアルカリ焼けが発生してしまう。
これはダメかも知れないと思って作業しても、なんともないケース。
正しい知識があっても、作業を始めてみないと分からないこともあります。
冒頭でお伝えした「安易に考える業者」と「断る業者」の違い。
それは、運がよくまだアルカリ焼けに遭遇していない業者か、運が悪くアルカリ焼けを起こして大クレームを経験した業者か。
その違いと言い換えてもいいのかもしれません。
ワックス剥がしは清掃のプロ……ではなく「フローリング」のプロに!
フローリングのワックスはく離作業は、清掃のプロではなく、木を知り尽くしたフローリングのプロに依頼されることをおすすめします。
作業のポイントをかいつまんでご説明すると……
(1)作業区域を細かく区切る
はく離剤を一部屋全体に塗ってしまうのではなく、はく離剤や水分が長時間フローリングと接触しないように作業を進めます。
例えば1㎡ごとなど、細かく区切って、問題がないことを確認しながら作業を行っていきます。
ワックスはく離剤を塗ったままの状態で長時間フローリングを放置する。
そのことで、フローリングを保護していた塗装がはがれる可能性があります。
保護膜がはがれてしまうと、木に直接はく離剤が接触して、アルカリ焼けを起こします。
(2)大量の水分を使用しない
化学床のワックスはく離作業は、床一面を水浸しにして行います。
はく離剤を塗ったままにして、どんどん水を足していくとはく離剤とワックスが反応、簡単にワックスがはく離できます。
しかし、フローリングは木に弱い天然素材。
フローリングのワックスはく離においては、これは絶対にやってはいけない方法です。
大量の水分は使用しない。使用する水分は必要最低限。そしてフローリングと接触する時間をできるだけ短くする。
これが、フローリングのワックスはく離作業を行う上で、大切なポイントです。
ワックスを剥がした後のお手入れ方法
ワックスはく離の目的。
それは、劣化した古いワックス層を除去すること。そして、その後に新たにワックスを塗り直すことで、美観を向上させ、床材を長持ちさせることです。
つまり、「剥がして終わり」ではなく、新たにワックスを塗る必要があります。
ワックスにもたくさんの種類があります。
どんなワックスを選択して、今後どうやってお手入れしていくか。
それによって、作業の難易度やリスクも変わります。
ワックスは塗ったら必ずいつかははく離作業が発生します。
そのはく離作業にはリスクを伴います。
そのことを決して忘れないでください。
例えば、化学床用の耐久性の高いワックスをフローリングに塗ったとします。
しばらくの間はキレイに維持できているように思えるでしょう。
しかし、いざはく離作業となると簡単にはいきません。
化学床用のワックスですから、強いアルカリ性のはく離剤ではく離することを前提として作られています。
上述のように、強いアルカリ性のはく離剤を使うことには、フローリングの保護塗膜やフローリング自体を傷めてしまうという大きなリスクが伴います。
ワックスの耐久性を優先するあまり、はく離の際のフローリングへのダメージを失念していた。
その結果が「フローリングの張り替え」となると、耐久性もなにもありません。
フローリングには、フローリング専用のワックスを使用するようしてください。
また、ワックスはく離せずに何年も「塗り重ね続ける」方もいらっしゃいます。
ワックス層が厚くなりすぎると、かえって劣化して傷つきやすくなる場合があります。
塗り重ねの際にワックスとワックスの間に汚れを抱き込んでしまうことで、元の床の色とは似ても似つかない色合いになっていることもあります。
ワックスは年数が経過すればするほどはく離しづらくなります。
適切な年数ではく離してリセットすることも大切なのです。
写真:ワックスを塗り重ね続けて美観を損ねている例
ワックスを塗るなら… Bonaの製品をおすすめします!
フローリングをキレイに維持するためのワックスには、「Bonaポリッシュ」をおすすめします。
ツヤのない「ポリッシュマット」。ツヤのある「ポリッシュグロス」の2種類があり、お好みで選んでいただけます。
(本来のフローリングのツヤに近いものを選ぶのが原則です)
Bonaポリッシュは「Bonaポリッシュリムーバー」で簡単にはく離できます。
Bonaポリッシュは、フローリングの使用頻度によっても異なりますが、年に1~2回を目安に塗布しましょう。
ワックスを塗り重ねる前には、必ずフローリングをキレイに掃除してくださいね。
そして、3年ほどたったら、Bonaポリッシュリムーバーではく離をしてください。
いかがでしたでしょうか?
ワックス剥がしと普段のお手入れにぜひ参考にしてみてください!